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MACS J0454.1-0300:ウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた金色の銀河団と重力レンズのアーク

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金色の楕円銀河がびっしりと集まった視野で、中央付近に明るい銀河が1つあります。銀河団の左上から左側にかけて、オレンジ色の弧がいくつも走っています。右側と下側には、長く青い光条を伸ばす手前の明るい星があります。
ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラNIRCamがとらえた銀河団MACS J0454.1-0300です。金色の銀河は、この銀河団に属する銀河です。弧状に引き伸ばされたオレンジ色の像(アーク)は、銀河団よりはるかに遠くにある銀河で、その光を銀河団の重力が曲げています。光条を伸ばす明るい星は、天の川銀河の中にある星です。視野は2.22分角×2.15分角で、北は真上から時計回りに69.6°の方向です。色は、主に赤外線のさまざまな波長帯に割り当てたもので、人の目に見える色ではありません。ESA/Webb, NASA & CSA, L. Furtak, S. Fujimoto (サイズ変更) · CC BY 4.0

ウェッブ宇宙望遠鏡の2026年9月の「今月の画像」(Picture of the Month)は、オリオン座にある銀河団MACS J0454.1-0300です。この銀河団の重力は、背後にあるずっと遠くの銀河からの光を曲げ、拡大して明るく見せています。遠くの銀河の中にある小さく明るい塊には、300倍以上に増光されて見えるものもあります。

金色の銀河団と、引き伸ばされたオレンジ色のアーク

画像のあちこちに散らばる金色の銀河は、MACS J0454.1-0300に属しています。この銀河団は、宇宙の年齢が約80億年だったころの姿で見えています。つまり、その光は60億年弱かけて地球に届いたことになります。この60億年弱という値は本記事での計算(138億年−80億年=58億年)によるもので、ESAが発表した数字ではありません。金色の銀河は楕円銀河で、最も大きく明るいものが中央にあります。

色は割り当てたものですが、銀河が金色に見えることには物理的な理由があります。楕円銀河には新しい星をつくるためのガスがほとんどないため、その光の大部分は年老いた低温の星から出ています。こうした星は、波長の長い光をより多く放ちます。この画像には0.9~4.4マイクロメートルの10種類の波長帯が使われていて、そのほぼすべてが赤外線です。波長の長い帯ほど赤く表示しているため、このような銀河は金色に写ります。

左側のオレンジ色のアークは、この銀河団の一員ではありません。銀河団よりはるかに遠くにある銀河で、銀河団の重力がその形をゆがめ、弧状に引き伸ばしています。さらに、宇宙が膨張したため、これらの銀河の光は波長が長いほうへ引き伸ばされ、赤い側にずれています(赤方偏移)。ウェッブはこのような赤い光に対する感度がハッブル宇宙望遠鏡よりはるかに高いため、同じ銀河団を2014年にハッブルが撮影した画像には写っていない数百個の銀河が、この画像には写っています。

銀河団が像を拡大するしくみと、300倍という数字の出どころ

銀河団は非常に大きな質量をもち、質量は光の進む道筋を曲げます。銀河団と背景の銀河がほぼ一直線に並んでいると、背景の銀河からの光が、曲がった複数の経路を通って地球に届くことがあります。その結果、アークができたり、ときには1つの天体の像が複数見えたり(多重像)します。1つの銀河の像が4つ以上できるには、天体どうしがきわめて正確に一直線に並ぶ必要があり、ESA/Webbによると、そうした像が見られる銀河団は全体の10~20%にすぎません。

重力レンズは、光源の表面輝度(単位面積あたりの明るさ)を変えません。そのかわりに、光源の像を引き伸ばし、空での見かけの面積を大きくします。増光率は、像の見かけの面積を、レンズがない場合の光源の見かけの面積で割った値です。表面輝度は変わらないので、面積が300倍になった像からは300倍の光が届きます。増光率は、臨界曲線と呼ばれる空の上の線の近くで最大になります。理想化した点光源なら、理論上はそこで増光率がいくらでも大きくなります。しかし、実際の光源には大きさがあるので増光率は有限にとどまり、光源が小さいほど高くなりえます。最も大きな増光率が銀河全体ではなく小さな塊で得られるのは、そのためです。

300倍という増光率は、重力レンズ効果を受けた背景の銀河の中にある、小さく明るい塊についての値です。塊には差し渡しわずか5光年ほどのものもあり、その一部は300倍を超えて増光されて見えます。重力レンズのおかげで、ウェッブは口径6.5 mの主鏡だけでは検出できないほど暗い天体も調べることができます。

この視野からわかること、そしてこれからの観測

この視野には、宇宙がまだ若かったころの銀河の多重像が写っています。ビッグバンから20億年後の姿で見える銀河群と、ビッグバンからわずか8億年後の姿で見える1つの銀河です。この銀河群の銀河は合体しつつあるように見え、それが星の大規模な一斉誕生(スターバースト)を引き起こしたようです。研究者たちは、1つの銀河の像が4つ以上できるこのまれな配置を、MACS J0454.1-0300の中で2例見つけました。同じ銀河団の中でこの配置が2例以上見つかったのは、これが初めてです。

データは、ウェッブの2つの観測プログラムから得られました。1つはL・フルタク(L. Furtak)が率いるプログラム5058で、宇宙誕生から最初の10億年の間に存在した個々の星を、重力レンズを利用して探すものです。このプログラムでは今後、この銀河団によって重力レンズ効果を受けている銀河の1つを繰り返し観測し、極めて大きく増光された単独の星を探す予定です。この観測はまだ先のことで、ESA/Webbの発表には結果は載っていません。もう1つは藤本征史(Seiji Fujimoto)が率いるプログラム6882で、多数の銀河団をさまざまな波長で観測し、初期の銀河で星形成がどのように始まったのかを調べることを目指しています。

空での位置と、自分の目で見えるもの

この銀河団はオリオン座にあり、位置は赤経4時54分、赤緯−3°です(赤経と赤緯は、空の上での経度と緯度にあたります)。天の赤道のすぐ南にあるため、北半球からも南半球からも見えます。東京では、最も高いときで南の空の高度約51°まで昇ります。12月上旬には空で太陽と正反対の方向にあるため、真夜中ごろに最も高くなります。

ただし、自分の目で見るとなると話は別です。SIMBADデータベースによると、この銀河団で最も明るい銀河は、近赤外線のIバンドで18.1等です。また、この銀河団の銀河でV等級(可視光の等級)が登録されているもののうち、19等より明るいものは1つもありません。これほど暗い銀河は、アマチュアの望遠鏡をのぞいても目では見えません。よく使われる目安では、口径40 cmの望遠鏡で見える限界は約15等で、19等はそれより約40倍暗いからです。この画像に重力レンズのアークが写っているのはウェッブの赤外線の感度のおかげで、接眼レンズをのぞいて見えるものではありません。

出典とライセンス

  • ESA/Webb「今月の画像」potm2609a(2026年9月29日)『Galaxies in a cosmic house of mirrors』 — 銀河団の名前、星座、座標(赤経4時54分11.04秒、赤緯−3°0′51.75″)、視野と画像の向き、画像に写る銀河団の時代、10~20%という割合、2つのまれな配置、20億年後の銀河群と8億年後の銀河、300倍を超えて増光されることがある差し渡し5光年ほどの小さな塊、2014年のハッブルの画像との比較、プログラム5058と6882、画像の説明、波長帯の一覧、クレジットとライセンスに使用しました。https://esawebb.org/images/potm2609a/
  • ESA/Webb 画像・動画・テキストの利用規定(Usage of Images, Videos and Webb Texts) — ライセンスについて参照しました。画像はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際(CC BY 4.0)で公開されており、クレジット表記は変えずに示す必要があり、サイズの変更やトリミングをした場合はその旨を記してもよいとされています。https://esawebb.org/copyright/
  • ESA/Webb用語集(word bank)『Gravitational lensing』 — 重力レンズが遠くの天体の像をゆがめて拡大すること、そしてそのおかげでウェッブが口径6.5 mの主鏡だけでは検出できないほど暗い天体も調べられることの根拠としました。https://esawebb.org/wordbank/gravitational-lensing/
  • 英語版ウィキペディア『Gravitational lensing formalism』 — 増光の説明に使用しました。重力レンズは表面輝度を変えずに光源の空の上での見かけの大きさを変えること、増光率は像の面積と光源の面積の比であること、臨界曲線は理想化した場合に増光率が無限大になる線であることです。https://en.wikipedia.org/wiki/Gravitational_lensing_formalism
  • 英語版ウィキペディア『Elliptical galaxy』 — 楕円銀河が赤みがかって見える理由(ガスやちりが少なく、星形成がほとんど起きておらず、星が古いこと)に使用しました。https://en.wikipedia.org/wiki/Elliptical_galaxy
  • Universe Today『Webb Captures This Golden Galaxy Cluster in All it's Glory』(2026年10月19日) — この記事を書くきっかけになった二次的な報道です。記事中の数値をESA/Webbのページと照らし合わせたところ、ESA/Webbのページでは、300倍を超える増光は小さな塊だけに当てはまり、銀河全体には当てはまらないことが明記されていました。https://www.universetoday.com/articles/webb-captures-the-golden-galaxy-cluster-in-all-its-glory
  • SIMBAD天文データベース(MACS J0454に該当する天体) — 銀河の等級に使用しました。2026年10月21日にESAが示した位置から2分角以内を検索したところ、銀河団で最も明るい銀河CNOC MS 0451 101234はI = 18.1(V等級の登録なし)、V等級が登録されている天体で最も明るいのは[KZP2008] F5のV = 19.05、銀河団ClG 0451-03(= MACS J0454.1-0300)の赤方偏移は0.54でした。https://simbad.cds.unistra.fr/

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